高齢者の一人暮らしの現状は?起こり得る問題と安心のための対策
コラム
日本の高齢者人口は増加を続けており、今後ますます高齢化社会が深刻化すると予測されています。特に高齢の親が離れて一人暮らしをしている場合、心配や不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
実際、高齢者の一人暮らしにはさまざまなリスクやトラブルが潜んでおり、家族のサポートが不可欠です。本記事では、高齢者の一人暮らしの現状をお伝えしたうえで、実際に起こり得る問題と、それに対して家族がどのような対策を講じられるかを紹介します。これからの時代に備え、親の生活を見守るためにできることを考えていきましょう。
高齢者の一人暮らしの現状

日本の総人口は、令和5(2023)年10月1日時点で1億2,435万人です。そのうち65歳以上の人口は3,623万人に達し、総人口に占める割合は29.1%となっています。
この割合は昭和25(1950)年には5%未満でしたが、昭和45(1970)年に7%、平成6(1994)年に14%を超え、令和元(2019)年には28.4%と増加してきました。今後さらに増加していけば、令和52(2070)年には、2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上になる見込みです。
注目すべきは、65歳以上の一人暮らしの高齢者が増えている点です。令和2(2020)年時点で、65歳以上の一人暮らしは671.7万人です。これは65歳以上の人口の37.1%にあたります。男女別では、男性15%、女性22.1%です。
昭和55(1980)年時点において一人暮らしの高齢者の人口は88.1万人で、65歳以上の人口に占める割合が男性4.3%、女性11.2%でした。その当時と比べて、かなり増加していることがわかります。さらに、平成12(2000)年には男性8%、女性17.9%に達しました。
このままのペースで増加が続けば、令和32(2050)年には、65歳以上の一人暮らしの方の人口は1083,9万人に達するとの推測が可能です。この数値は、65歳以上の高齢者の55.4%に相当します。
また、一人暮らしの高齢者には災害への備えが十分でないケースが多く、社会的な孤立や人付き合いの少なさが問題となっています。そのため、国や自治体だけでなく、家族の支援や対策もますます重要となるでしょう。


引用:内閣府「令和6年版高齢社会白書」
出典:内閣府「第1章 高齢化の状況(第1節 1)」
一人暮らしの高齢者が増加傾向にある背景

一人暮らしの高齢者が増えている背景には、「頼れる家族がいない」「現状の生活に不自由を感じていない」など、さまざまな要因があります。
頼れる家族がいない
少子化や核家族が進み、高齢者が頼れる家族を持たないケースが増えています。誰かに頼って生活したくても、周囲に頼れる人がいないため、一人暮らしを余儀なくされている方も少なくありません。また、配偶者や兄弟などと死別が原因で孤立するケースもあるでしょう。
一人暮らしの高齢者の頼れる人の有無については、内閣府の平成23年度「高齢者の経済生活に関する意識調査結果」で、具体的な数値を確認できます。
この調査で、全国の60歳以上の男女に頼れる人の存在の有無を調査したところ、「いない」と答えた人は全体の2.4%でした。しかし、家族形態別で見ると、単身世帯で頼れる人がいないと答えた割合は12.3%という結果になっています。
夫婦2人世帯(1.9%)、本人と親世帯(5.3%)、本人と子世帯(0.4%)と比較すると、特に一人暮らしの高齢者が頼れる人がいないと感じている割合が高いことがわかります。
出典:内閣府「平成23年度 高齢者の経済生活に関する意識調査結果」
現状の生活に不自由を感じていない
経済面に不安がなく、家族や社会とのつながりがある場合、一人暮らしを希望する高齢者も少なくありません。
内閣府の「令和3年版高齢社会白書(全体版)」では、60歳以上の日本人男女1,367人を対象として、現在の生活に満足しているか尋ねています。結果、81.6%の人が「満足している」または「まあ満足している」と回答しました。
この満足の理由にはさまざまな要素がありますが、ネット通販や宅配サービスなどが充実し、一人暮らしでも生活しやすい世の中になったことも一因でしょう。
高齢者の一人暮らしで起こり得る問題

高齢者の一人暮らしでは、さまざまな問題が起こる可能性があります。特に、次の5つの項目には注意が必要です。
偏った食生活や低栄養状態のリスク
一人暮らしの高齢者は、献立に無頓着となりがちです。その原因の一つに、食事をともにする相手がおらず、食への関心が薄れてしまうことが挙げられます。
どうせ一人だからと、毎日かんたんな食事や似たようなメニューで済ませてしまえば、偏った食生活につながります。さらに、高齢者は食事量が減るため、必要な栄養素が十分に摂取できず、低栄養状態に陥る危険があります。特に、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどが不足しがちです。
ほかにも、食生活に関する認識の誤りも問題です。「たんぱく質や脂質は控えめに」といった誤解から、栄養が足りなくなることもあるでしょう。また、足腰が衰えて買いものに行くのが難しくなると、食材をそろえられずに食事の偏りを招くこともあります。
犯罪トラブルに巻き込まれる
高齢者は、特に一人暮らしの場合、さまざまな犯罪に巻き込まれるリスクが高めです。内閣府の「特殊詐欺に関する世論調査(平成29年1月調査)」によると、「自分は被害にあわない」と考える人は70歳以上で50.7%でした。18~29歳の割合28.2%と比べると高く、高齢者のこうした油断は特殊詐欺犯の付け入る隙となる可能性があります。
一人暮らしの高齢者は、近くに頼れる人がいないことも多く、気づかないままトラブルに巻き込まれるパターンもあるでしょう。特に注意すべきトラブルには、以下のようなものが挙げられます。
- オレオレ詐欺
- 還付金等詐欺
- 架空請求詐欺
- 悪質リフォーム
- 定期購入トラブル
また、特に近年はサイバー犯罪も社会問題となっています。総務省の「情報通信白書令和3年版」によると、60~69歳で73.4%、70歳以上で40.8%がデジタルデバイスを利用しています。
スマートフォンを利用する高齢者は確実に増えており、そのためワンクリック詐欺やフィッシング詐欺などに巻き込まれるリスクも高まっています。
出典:内閣府「特殊詐欺に関する世論調査(平成29年1月調査)」
出典:総務省「情報通信白書令和3年版 デジタル活用支援」
病気やけがの発見の遅れ
高齢になると病気やけがのリスクが高まるため、消費者庁は65歳以上の高齢者に対して、転倒による骨折や誤飲による窒息などの不慮の事故に注意を呼びかけています。ほかにも、以下のような病気は高齢者によく見られます。
- 脳卒中
- パーキンソン病
- 心筋梗塞
- 肺炎
一人暮らしの場合、こうした病気やけがが発生してもすぐに助けを求められないのが難点です。たとえ近所の方やヘルパーの方と日常的な交流があっても、すぐに異変に気づいてもらえるとは限りません。
本来なら早期発見で助かるような病気やけがでも、一人暮らしでは発見が遅れ、深刻な事態に陥ることがあります。最悪の場合、孤独死につながるケースもあるため、家族としては何らかの対策が必要となるでしょう。
出典:消費者庁「高齢者の不慮の事故」
関連記事:高齢者に多い家庭内事故とは?具体的な防止策や見守りの重要性
コミュニケーション不足や生活意欲の低下
高齢になると身体機能が低下し、外出の機会が減る方も少なくありません。これは社会とのかかわりの希薄化をもたらし、楽しみや生きがいを見失うことがあります。
特に一人暮らしの高齢者は、日常的な会話の機会も少なく、コミュニケーション不足が深刻化しがちです。
このような状況になると生活意欲が低下し、食事や洗濯、掃除など基本的な家事が疎かになる場合もあるでしょう。また、入浴を避けたり、自分の身なりに気を配らなくなったりすることも考えられます。
認知症の発症および進行
認知症は、自覚がないまま発症することも多く、一人暮らしの高齢者の場合、周囲が気づいたときには認知症が進行しているケースも少なくありません。
なかでも、コミュニケーション不足や生活意欲の低下に陥っている方は、認知症の発症リスクが高くなるとされています。認知症になると、認識力や判断力などが低下し、日常生活において以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
- 火の消し忘れ:火事の原因になる
- 金銭管理ができない:詐欺被害、財産の浪費
- 服薬管理ができない:薬の飲み忘れ、過剰摂取
- ゴミ出しのルールが守れない:悪臭や害虫の発生
- 大声で叫ぶ:近隣住民とのトラブル
このようなトラブルがあると、近隣住民からの苦情が入ったり部屋からの退去を求められたりし、一人暮らしを続けるのが困難になります。
一人暮らしの高齢者のために家族ができる対策

高齢の親などがあんしんして一人暮らしをするためには、家族が以下のような対策を講じる必要があります。
見守りサービスの活用
一人暮らしの高齢者の安否確認をサポートする「見守りサービス」を提供する民間企業があります。これらのサービスを活用すれば、離れて暮らしていても親の安全を見守ることが可能です。
見守りサービスには、大きく分けて4種類あります。それぞれの特徴を理解し、親の生活スタイルに合ったものを選ぶことが重要です。
- カメラ型
カメラ型の見守りサービスは、親の自宅にカメラを設置し、24時間安否確認ができるものです。リアルタイムでの確認ができる反面、プライバシーの問題もあります。 - センサー型
センサー型は家電やよく通る場所などにセンサーを設置し、人の動きを感知しなかった際に、サービス提供側のスタッフが現地に赴くタイプのサービスです。感知範囲には制限があるため、センサーの設置場所は考える必要があります。 - ボタン型
ボタン型は親の自宅に非常ボタンを設置し、何かあった際にボタンを押すとセキュリティ会社のスタッフが現地に赴くタイプのサービスです。ボタンを押せない事態だと機能しない点に注意が必要です。 - ペンダント型
ペンダント型のボタンを首に掛け、体調不良など何かあったときにボタンを押すと、セキュリティ会社のスタッフが現地に赴くのがペンダント型サービスです。手軽に使える一方、紛失や着用忘れなどのネックもあります。
以上のような民間の見守りサービスは、費用がかかるほか、利用するための要件が設けられている場合もあります。事前に確認しておくとよいでしょう。
自治体独自のサービスの活用
自治体が提供する見守りサービスを活用するのも、一人暮らしの高齢者を支える有効な手段です。自治体によって内容は異なりますが、以下のような支援が用意されていることが多いため、確認してみましょう。
- 配食サービス
一人暮らしの高齢者の自宅に食事を届けるサービスで、訪問時に安否確認も実施します。 - 緊急通報システムの貸与
ケータイ型やペンダント型、据え置き型などの緊急通報システムを貸し出す地域があります。緊急通報システムは緊急時にボタンを押すと、家族や自治体の委託業者に連絡が入る仕組みです。 - 高齢者サロン
自治体のなかには、孤独や引きこもりを未然に防ぐために、高齢者が気軽に参加できる交流の場を提供しているところもあります。 - 監視システム
一人暮らしの高齢者の自宅に導入した監視システムを通じて、安否確認を実施する自治体のサービスもあります。確認して得た情報は、家族や自治体などと共有可能です。
自治体が提供している見守りサービスの内容は、地域ごとに異なります。詳細を知りたいときは、親の居住地の自治体に問い合わせましょう。
介護保険サービスの活用
要介護認定を申請し、要支援または要介護と認定された場合、介護保険サービスの利用が可能です。介護保険サービスには、訪問介護や訪問看護、デイサービス(通所介護)、ショートステイなどがあります。
たとえば、訪問介護を利用すると、ヘルパーなどが自宅に訪問し、料理や掃除などをサポートしてくれます。また、通所サービスを利用すれば、ほかの利用者との交流を通じて、コミュニケーション不足も解消できるでしょう。
近居
親の近くに住居を構える「近居」も対策の一つです。近居は同居とは異なり、親世帯と子世帯の住居は別となるため、お互いの生活リズムを崩さず生活できます。
親の安否確認や身の回りのサポートもしやすいでしょう。また、親世帯による家事や育児のサポートが受けられるのは、子世帯のメリットです。
近居に関しては、住宅取得費用や賃貸借費用などの補助金制度を設けている自治体があるため、検討する際は申請条件などをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
ドコモの見守りサービス「ちかく」を紹介

見守りサービスのなかでも、特にドコモの見守りサービス「ちかく」は、導入するメリットが豊富でおすすめです。
スマホで離れて暮らす親の様子が確認できる
ちかくは親側のテレビにつなげた端末が、親の在室を検知する仕組みで、日常的な安否確認に役立ちます。子側が親の在室状況を確認するためには、専用アプリを使います。アプリでは、リアルタイムの在室状況だけでなく、不在の場合は何時までそこにいたかの確認も可能です。
設定時間に起床が確認できない場合、アプリに通知が届くあんしんモードもあります。もしものときは、親側の操作不要でテレビ電話をつなげ、部屋の様子を確認できます。
テレビ電話機能で離れた家族と会話ができる
親側の端末をつなげたテレビと、専用アプリをインストールした子側のスマートフォンがあれば、テレビ電話機能の利用が可能です。大画面のテレビに家族の姿を映せば、まるで会っているかのような感覚で会話できます。
テレビ電話中に、子側からの写真の共有も可能です。なお、専用アプリをダウンロードしたほかの家族なども合わせて、最大4人まで同時にテレビ電話ができます。
設置や操作がかんたん
ちかくは設置工事が不要なうえ、Wi-Fi無しで利用できます。使い方はかんたんで、親側の自宅にあるテレビにHDMIケーブルで家型の端末をつなぎ、コンセントに差し込むだけです。
親側は、普段のテレビと同じような感覚でリモコンを操作すれば、問題なくテレビ電話ができます。スマートフォンやIT機器の操作が不得手な方でもあんしんです。
自治体によっては助成金・補助金がある
ちかくを導入する際に、東京都立川市と兵庫県たつの市、そして徳島県東みよし町は、補助金または助成金を交付しています。
東京都立川市は、機器購入費用に対し、8,000円を限度額とした助成金を支給しています。一方、兵庫県たつの市が支給しているのは、対象機器購入に要する費用に対しての、3万円を上限とした補助金です。
徳島県東みよし町は、上限1万6,500円の範囲内で、機器購入費の2分の1(100円未満切捨て)を補助金として交付しています。
出典:株式会社チカク「!“デジタル近居”サービス「ちかく」に兵庫県たつの市が購入費用3万円を補助」
出典:株式会社チカク「“デジタル近居”サービス「ちかく」に東京都立川市が購入費用を一部助成」
出典:株式会社チカク「“デジタル近居”サービス「ちかく」に徳島県東みよし町が購入費用を一部補助」
まとめ: 高齢者の一人暮らしの現状を知ろう
近年、「頼れる人がいない」「現状の生活を不自由に感じていない」といった理由から、一人暮らしを続ける高齢者は増えています。しかし、一人暮らしには病気やけがの発見が遅れるリスクやトラブルに巻き込まれる危険性もあるため、注意が必要です。
また、コミュニケーション不足や生活意欲の低下にも陥りやすく、認知症が発症するおそれもあります。高齢の親にあんしんして一人暮らしをしてもらうためには、見守りサービスや自治体のサービス、介護保険サービスなどを活用するとよいでしょう。
ドコモの見守りサービス「ちかく」なら、離れて暮らす一人暮らしの親の様子がスマートフォンでかんたんに確認できるので、親の安否が心配な方にもおすすめです。