災害時に高齢者を守る対策とは?被害の現状や備えておきたいグッズを解説
コラム
地震や台風、洪水などの自然災害はいつ発生するかわかりません。災害後も、停電や断水が続くことがあり、高齢の親と離れて暮らす方は心配に感じているでしょう。
発災時に高齢者を守るためには、日ごろの備えが不可欠です。本記事では、高齢者の災害における被害状況や課題を踏まえて、高齢者を守る対策や備えておくべきグッズを解説します。
高齢者の災害に関する被害の現状

少子高齢化が進むなかで、自然災害が発生した際に高齢者が犠牲になるケースが増えています。たとえば、2004年と2005年に発生した台風や集中豪雨による土砂災害では、死者・行方不明者のうち6割が65歳以上の高齢者でした。
また、未曾有の事態となった2011年の東日本大震災でも、死者の53.4%を高齢者が占めています。そのうち20%は、寝たきりや家族の迎えが困難だったなどの理由で自主避難ができなかったことが原因でした。
日本は地震大国といわれ、この先も大きな震災が起こる可能性が示唆されています。また、世界的な気候変動による災害の増加も危惧されており、高齢者を守るための対策が求められます。

引用:国土交通省「災害時・緊急時に対応した避難経路等のバリアフリー化と情報提供のあり方に関する調査研究 報告書概要版」
出典:国土交通省「平成17年度国土交通白書:第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開」
高齢者の災害時における課題

高齢者が被災しやすい理由のひとつに、居住地域の危険か所を認知できていない点が挙げられます。また、若年層と比べると身体能力が衰えているため自主避難が難しいほか、必要な情報をスムーズに得られない人が多い点も課題となっています。
高齢者を災害から守るためには、課題を把握したうえで対策を講じることが大切です。ここでは、3つの課題を解説します。
危険か所の認知度が低い
災害時は、状況に合わせて迅速な避難が求められます。そのためには、避難場所や避難経路の確認と合わせて、自分が暮らす地域の危険か所を把握することも重要です。
しかし、国土交通省の資料によると、避難場所や避難経路を認知している高齢者は68.7%であるのに対して、居住地域における自然災害の危険がある場所を認知している高齢者は24.5%という結果でした。
危険か所の認識が薄れると、危険意識が下がる恐れがあります。防災意識を高めるためにも、危険か所や避難場所などをまとめたハザードマップを活用して、事前に情報を把握しておきましょう。
出典:国土交通省「平成17年度国土交通白書:第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開」
高齢者の単身世帯増加により自主避難が難しい
内閣府の「令和5年版高齢者白書(全体版)」によると、2040年における65歳以上の人口に対して一人暮らしの人が占める割合は、男性が20.8%、女性が24.5%になると見込まれています。
同データによると、1980年では男性が4.3%、女性が11.2%であり、年々高齢者の単身世帯が増加傾向にあります。
高齢者のなかには、体力的に自主避難が困難な人も多く、家族や地域住民の助けが必要です。しかし、近隣に家族が暮らしていない場合は、逃げ遅れてしまうケースも考えられます。
単身でも最善の対処ができるように、普段からの備えが大切です。

引用:国土交通省「第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開」
出典:内閣府「令和5年版高齢者会白書(全体版)」
リアルタイムの情報が入手しにくい
災害時は、現状を正しく把握して適切な行動をとる必要があります。また、平時も防災に関する情報を入手して、災害に備えた準備をすることが大切です。
しかし、高齢者にとっての主な情報源は、テレビやラジオ、新聞などのメディアであり、リアルタイムで情報が得られないケースも少なくありません。
災害によって停電になれば、ますます情報から遠のいてしまい、いざというときに避難できない可能性があります。特に、スマートフォンや携帯を持っていない場合は注意が必要です。
高齢者が災害から身を守るためにできること

高齢者を災害から守るには、自宅内の安全を確保したり家族間で災害時の連絡手段や避難経路を確認したりすることが大切です。また、離れて暮らす親には、地域や近隣住民との交流を促して、有事の際のサポート体制を構築する必要があります。
平常時からこうした対策を講じておけば、発災時もスムーズな対応が可能です。ここでは、5つのポイントを解説します。
住まいの状況を確認する
高齢者がスムーズに避難できるように、住まいの現状を確認して問題点があれば改善する必要があります。
たとえば、出入り口付近や通路にものが置いてあると動線の確保ができません。特に背の高いタンスや食器棚は、倒れて出入口や避難経路を塞ぐ可能性があるため固定する、もしくは設置か所を見直しましょう。
また、古い家屋は耐震対策が十分ではないケースも考えられます。耐震診断を受けて、耐震性が低いと判断された場合は補強を検討しましょう。
家族間で防災の相談をする
高齢者の防災意識を高めるには、家族間で防災の相談をすることも大切です。特に親と離れて暮らしている場合、災害が発生してもすぐに駆けつけられない可能性があります。ライフラインが寸断されれば、連絡がつかなくなるケースも考えられるでしょう。
事前に、避難場所までの経路を歩いて確認するほか、いざというときの集合場所などを決めておけば、災害の混乱時も落ち着いて行動しやすくなります。
医療機器を定期的に点検する
電動ベッドや電動車椅子、人工呼吸器といった電気を使用する医療機器は、災害時に備えて定期的な点検が不可欠です。また、停電を想定したシミュレーションをしておくと、いざというときにスムーズな対応がしやすくなります。
一般的に、医療機器には内蔵バッテリーが備わっており、直ちに使えなくなる心配はありません。しかし、復旧までに時間がかかる可能性もあるため、予備のバッテリーを用意しておくとあんしんです。
地域の人との交流を促す
普段から、地域の人と交流を深めておくと、発災時の助けになり孤立を防止できます。
特に、高齢者のみで暮らしている場合、自力で逃げられない可能性があるほか、被災後の情報収集が困難になるケースも少なくありません。日常的に挨拶や声かけをしていれば、災害時の困りごとも相談しやすいでしょう。
離れて暮らす高齢の親には、隣近所とのコミュニケーションや地域で開かれる防災訓練への積極的な参加を促すことも大切です。
避難行動要支援者名簿に登録する
内閣府では、各自治体に「避難者行動要支援者名簿」の作成を義務付けています。避難者行動要支援者名簿とは、災害時に自力避難が難しい高齢者や障がい者などを登録した名簿です。
どの家庭に支援を必要とする人がいるか把握できるため、災害時の安否確認だけでなく平時の見守りにも活用されます。
要介護3以上の認定を受けている人や身体障がい者手帳(1~2級)を持っている人など、一定の基準を満たす場合は自動的に登録されますが、自動登録の対象者以外で登録条件に該当する場合は事前に手続きが必要です。
高齢で自力避難が難しいと判断した場合は、早めに申請することをおすすめします。
高齢者が災害に備えて用意するべき防災グッズ

発災時の被害を最小限に抑えるには、普段から防災グッズを備えておく必要があります。また、発災後の不便な状況を想定して用意することも重要です。
しかし、何を用意すればよいかわからない方も少なくありません。特に、高齢者は自分で用意できないケースも考えられるため、家族のサポートが不可欠です。たとえば、災害時には食料品や飲料水のほか、ある程度の現金も用意しておくと役立ちます。
ここでは、高齢者が災害に備えて用意するべき防災グッズを6つ解説します。
食料品
発災時は、物流の混乱により食料品をはじめとする物品の供給が止まる可能性があります。農林水産省では、こうした発災時の状況を踏まえて3日~1週間分の食料品を備蓄することを推奨しています。
たとえば、ライフラインの停止を想定して、カセットコンロで温められるレトルト食品があると便利です。高齢者には消化の良いおかゆや雑炊のレトルトがあると重宝するでしょう。
また、缶詰などの長期保存に対応した食料品も必須です。そのほか、調理不要な栄養補助食品や水分補給がわりに使える栄養補助ゼリーなども備えておくとよいでしょう。
出典:農林水産省「発災当日から1週間分の備えについて基本的な考え方」
飲料水
地震や津波の発災時には、長期間断水するケースも考えられます。そのため、水は飲用や調理用だけでなく、手洗いや洗濯などに活用する生活用水も用意しましょう。
農林水産省では、1人に最低限必要な飲料水の量は1日1l程度を目安としている一方で、生活用水を踏まえて1日3lの備蓄を推奨しています。食料品と同様に、最低でも3日~1週間分を備蓄しておくとあんしんです。
出典:農林水産省「発災当日から1週間分の備えについて基本的な考え方」
カセットコンロ
ガスや電気が使えなくなった状況を踏まえて、カセットコンロも用意しましょう。湯沸しやかんたんな調理に使えるため、万が一、復旧までに時間がかかった場合も役立ちます。
また、災害時は入浴ができなくなるケースも少なくありません。カセットコンロがあれば、お湯で温めたタオルで身体を清潔にできるほか、血行促進やリフレッシュにも効果的です。
カセットコンロを用意する際は、カセットボンベも余分に備えておく必要があります。なお、カセットコンロ本体とボンベには使用期限があるため、定期的に確認して古くなった場合は新しいものに買い換えましょう。
懐中電灯
発災時は、停電になるケースも多いため懐中電灯も不可欠です。手回しで発電できる防災用の懐中電灯を選ぶと、電池が切れる心配がありません。
ただし、基本的に懐中電灯は一方向を照らすのに特化した照明器具です。停電時にものを探したり、足元の安全を確保したりする場合は便利ですが、広範囲を照らす際には適していません。
停電発生時も家のなかで快適に過ごすには、全方向を照らせるランタンが役立ちます。
また、充電が切れないように、ソーラーパネルで充電できるタイプのバッテリーもあるとあんしんです。
衛生用品
災害に備えて、トイレットペーパーやティッシュペーパー、救急用品、生理用品などもストックしておきましょう。
除菌や洗浄に使えるウエットティッシュも備えておくと便利です。また、簡易トイレがあると、配管の破損によりトイレが流せなくなった場合に役立ちます。
加えて、持病がある方は、万が一に備えて1週間分の薬を携帯することをおすすめします。併せて、市販の鎮痛剤や胃腸薬もあるとあんしんです。
出典:独立行政法人環境再生保全機構「知って安心!いざという時のために災害対策」
現金
近年は電子マネーが普及しており、普段は現金を持ち歩かないという方も少なくありません。しかし、災害時は、停電や通信障害などで電子マネーが使えなくなる可能性があります。
また、長期間の大規模停電が発生した場合は、ATMが停止する事態も考えられるでしょう。復旧するまでの備えとして、2万円程度の現金があるといざというときに助かります。
警視庁では、公衆電話や自動販売機の使用を想定して、小銭を中心に用意することを推奨しています。
出典: 警視庁「災害時は小銭が必要です」
高齢者の防災対策にも役立つ「ちかく」でできる3つのこと

「ちかく」は、離れて暮らす親子をつなぐ見守りサービスです。テレビ電話で気軽に対話できるほか、万が一の際は部屋の様子を確認できるため高齢者の災害防止にも役立ちます。
最後に「ちかく」の機能を3つ解説します。導入をご検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
テレビ電話で家族と対話できる
「ちかく」は、専用の機種をテレビとコンセントにつなぐだけでかんたんに使えます。自宅の使い慣れたテレビを活用できるため、高齢者でも抵抗なく使いやすいでしょう。
「ちかく」の大きな特徴として、顔を見ながら相手と話せる点が挙げられます。普段から「ちかく」を利用して離れた家族と連絡を取っていれば、災害に備えた会話もしやすいでしょう。また、災害時の不安を軽減するのにも役立ちます。
実際、2024年に発生した能登半島地震では、被災者が「ちかく」を通して離れた家族と連絡を取り合い励みになったという高齢者の声もありました。
有事の際は部屋の様子を確認できる
「ちかく」には、在室を確認できる「見守り機能」が備わっています。万が一の場合は、子側がスマートフォンで操作をしてテレビ電話を起動させることが可能です。
そのため、日常的な安否確認はもちろん、災害時に部屋の状況を確認する際にも役立ちます。
また、屋内における被災を防ぎ、スムーズに避難するには動線の確保が必要です。「ちかく」を通して部屋の様子が確認できれば、防災に向けて改善するべき点を伝えやすいでしょう。
グループ通話機能が使える
「ちかく」では、最大4人と同時にグループ通話ができます。兄弟姉妹や親戚などを招待すると、複数人で協力しながら高齢者を見守ることが可能です。
招待された人は、グループ通話機能だけでなく、在室確認や起床確認通知、緊急電話なども使用できるため、発災時もスムーズに対処しやすくなるでしょう。
まとめ: 見守りサービス「ちかく」で高齢者の防災対策を
災害時は、若年層と比べて身体的に動きづらい高齢者が被害に遭いやすい傾向にあります。高齢者を災害から守るためには、普段から防災対策を講じることが大切です。
特に、高齢の親と離れて暮らしている場合は、事前に住まいの状況確認をするほか、家族間で防災の話をする必要があります。
見守りサービス「ちかく」では、テレビ電話で直接顔を合わせて話すようにコミュニケーションを取ることが可能です。そのため、日常会話のなかで、気軽に防災の話もしやすいでしょう。
また、子側のみの操作でテレビ電話がつながる「あんしんモード」は、発災時の安否確認にも役立つ機能です。「ちかく」を活用して、離れて暮らす高齢の親を災害から守りましょう。