VR酔いとは、VRコンテンツを体験している際に、乗り物酔いに似た症状が現れることを指します。原因としては、空間を認知する際に、目からは移動していることを前提とした情報が入っているのに対して、実際の身体は移動していないといったような情報の不一致によって、脳や自律神経が混乱するためです。VR酔いは、普段乗り物酔いをしない人にも、発生する可能性があります。
VR酔いとは

VR酔いとは、VR(仮想現実)コンテンツの体験中に以下の症状が出ることを指します。
- めまい
- ふらつき
- 不快感
- 目の疲労
- 頭痛
- 発汗
- 吐き気
- 症状が重くなると実際に嘔吐する
VRに加えて、3Dゲームや3D映画などの環境でコンテンツ体験時に同様の症状が出ることを総称し「3D酔い」と呼ばれることもあります。英語では「VR(3D)sickness」です。
VR酔いの原因や起こる理由

VR酔いの原因は、空間を認知する際に、目からは移動していることを前提とした情報が入っているのに対して、実際の身体は移動していないといったような情報の不一致によって、脳や自律神経が混乱するためです。
私たちは日常において以下の情報を脳で統合して空間認知を行います。
- 目から得られる情報
- 耳(平衡感覚を司る前庭器官)で感じる加速や減速・揺れの情報
- 筋肉や関節から入ってくる揺れや振動の情報
一方で、VRコンテンツを体験する際は、ヘッドマウントディスプレイを通じて、目からの情報を得て空間認知を行うのが特徴です。
そのため、視覚情報と体の感覚(耳や筋肉など)との不一致によって脳が混乱し、その結果としてVR酔いが発生します。
VR酔いと乗り物酔いの比較

VR酔いは、乗り物酔いと似た症状が生じます。また、三半規管が弱い人が発症しやすいことが共通点です。一方で、VR酔いの場合は、慣れない刺激を得ることが多いため、普段乗り物酔いをしない人にも起きる可能性があります。
乗り物酔いは、主に次のような要因で発生します。
- 人間の身体の平衡感覚やバランス感覚が失われる
- 常に身体が揺れる影響で、視野が合わせにくくなり視覚からの情報が乱れる
- 乗り物特有の匂いに嗅覚が反応する
乗り物に乗ることで発生するさまざまな影響から、脳は感覚混乱という状態となり、乗り物酔いが引き起こされます。乗り物酔いは三半規管の感受性や平衡感覚を司る前庭小脳が発達し始める4歳くらいから始まり、幼児や若年層に多く発生する傾向にあります。
その後20歳前後で、前庭小脳の老化が始まり刺激への反応が鈍くなったり、さまざまな経験から感覚の乱れに脳が反応できるようになったりすることで、年齢を重ねるごとに発症しにくくなるのが一般的です。
一方で、VR酔いは大人や高齢者のユーザーでも発症する可能性があります。VRで提供されるコンテンツのなかには、揺れや加速、運動パターンなどの今まで体験したことのない刺激を得ることも多いためです。
VR酔いを防ぐための対策方法

VR酔いは対策が可能です。一方で、それぞれの対策方法の効果には個人差があるため、自身にあった対策をみつけることも重要です。おすすめの対策方法を以下で紹介します。
自分のIPDとレンズの距離を合わせる
IPDとは、瞳孔間距離(両目の黒目同士の距離)のことです。自分のIPDを把握し、ヘッドマウントディスプレイのレンズの距離を自分のIPDに合わせておくことで、視覚からのギャップ軽減に効果があります。メガネをかけている人なら、処方箋に瞳孔間距離として「PD」の値がミリ単位で記載されていることがあり、IPDの値として確認できます。メガネをかけていない場合は、アプリなどでも計測可能です。
体調不良時はVRを避ける
体調がすぐれないときや、重い食事をした後は、VRの使用を中断または避けるのが重要です。しっかり睡眠をとったり、体調を整えたりしてから使用しましょう。
VRに徐々に慣れる
たとえば最初は1日10分程度の利用時間にして、少しずつ時間を伸ばすなどの方法があります。少しでも症状が出たらVRデバイスを外して休憩しましょう。
動きの激しいコンテンツは避ける
画面が激しく動けば動くほど脳と身体の認知のギャップが大きくなります。静止画やゆっくりとした映像が流れるコンテンツから試しましょう。
視線の方向は中央に、頭を激しく動かさない
頭を急激に動かすと、画面の変化と頭の動きとの間にタイムラグが生じてVR酔いが発症しやすくなります。できるだけ視線は画面の中央など安定した位置を保ち、頭を急に激しく動かさないようにしましょう。
酔い止めを飲んでおく
応急処置になりますが、VRコンテンツを利用する前に酔い止めを飲んでおく方法もあります。ただし、酔い止めは場合によりきかないことがあるため、頼りすぎないようにしましょう。
VR酔いが発生したときの解決方法

VR酔いをしてしまったときの解決方法を以下で紹介します。
VRをすぐに中断する
VRコンテンツ体験中に吐き気やめまい、頭痛などを感じたら、すぐに中断し休憩を取りましょう。
深呼吸をする
深呼吸をすることで、副交感神経が優位になり、リラックスした状態になります。
安静にする
頭は動かさず、姿勢は横になって目を閉じるのもおすすめです。